国家資格・法令
ドローンの日常点検のやり方|飛行前点検・作動点検・飛行後点検の手順と記録【実地試験対応】
日常点検は、事故を防ぐための毎回の習慣であり、国家資格の実地試験で必ず採点される科目でもあります。国土交通省の資料をもとに、手順を4つの段階に分けて解説します。
「点検項目は覚えたつもりなのに、本番で1つ飛ばしてしまった」。実地の修了審査で、受講生が最も悔しがるのがこの失敗です。日常点検は操縦技術ほど目立ちませんが、実地試験では点検漏れ1つで10点が引かれ、周囲の安全を確認せずにモーターを回せばその場で不合格になります。この記事では、国土交通省の「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」と「無人航空機操縦士実地試験実施細則(回転翼航空機・マルチローター)」をもとに、日常点検の手順を順番に整理します。
1. 日常点検とは?いつ・何を点検するのか
日常点検は、飛行させる前などに行う点検で、その結果は飛行日誌のうち「日常点検記録(様式2)」に記載します。特定飛行を行う場合は、飛行させる都度、点検と記録が必要です。様式2には、次の9項目が示されています。
| 点検項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 機体全般 | 機器の取付け状態(ネジ、コネクタ、ケーブル等) |
| プロペラ | 外観、損傷、ゆがみ |
| フレーム | 外観、損傷、ゆがみ |
| 通信系統 | 機体と操縦装置の通信品質の健全性 |
| 推進系統 | モーターまたは発動機の健全性 |
| 電源系統 | 機体および操縦装置の電源の健全性 |
| 自動制御系統 | 飛行制御装置の健全性 |
| 操縦装置 | 外観、スティックの健全性、スイッチの健全性 |
| バッテリー・燃料 | バッテリーの充電状況、残量表示機能の健全性 |
実地試験では、この点検を「飛行空域などの確認」「作動前点検」「作動点検」「飛行後点検」の流れで行います。実際の運航でも同じ順番で進めると、漏れを防ぎやすくなります。なお、機体の設計製造者が点検項目を指定している場合は、その指定に従います。
2. STEP1 飛行空域などの確認
機体に触る前に、まず飛行そのものに問題がないかを確認します。実地試験の細則では、次の5つが確認事項の例として示されています。
- 飛行空域とその周辺の状況に問題はないか
- 航空法などの違反はないか
- 必要な許可書・承認書・技能証明書などを携帯しているか
- 操縦者の体調などに問題はないか
- 気象状況に問題はないか
気象については、実地試験では風速5m/s以上の突風や降雨などで実施できないときは中止となり、試験を再度行うことができます。
3. STEP2 作動前点検(電源を入れる前)
電源を入れる前に、目と手で確認する点検です。
- 各機器が確実に取り付けられているか:ネジやコネクターの脱落・ゆるみ
- 機体と操縦装置の外観:ローター・プロペラ、フレーム、機体識別票などに異常・損傷・ゆがみがないか
機体識別票(登録記号の表示)は見落としやすいポイントです。点検した結果は、その場で日常点検記録に書き込みます。
4. STEP3 作動点検(電源を入れて)
機体と操縦装置の電源を入れて、実際に動かしながら確認します。細則では次の6つが例として示されています。
- 電源系統:機体と操縦装置の電源を入れたときの状態は正常か
- 通信系統:機体と操縦装置の通信、GNSS(衛星測位)の通信は正常か
- バッテリー残量(燃料の搭載量)は十分か
- リモートIDの作動は正常か(非搭載機の試験では、正常に作動していると仮定して点呼を行う)
- 推進系統(モーター等)は正常か
- 自動制御系統と操縦系統は正常か:機体を離陸地点の真上でホバリングさせ、各操縦系統を操作して、機体と操縦装置が意図どおりに動くかを確認し、確認後に着陸させる
注意:安全確認なしでモーターを回すと即不合格
実地試験では、周囲の安全を確保しないまま推進系統などを作動させて点検した場合、「危険な操作」としてその場で不合格になります。モーターを回す前は、周囲に人や物がないことを確認し、声に出して伝える習慣をつけましょう。
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5. STEP4 飛行後点検と記録
飛行が終わったら、機体の状態を確認します。細則では次の4つが例として示されています。
- 各機器が確実に取り付けられているか(ネジ・コネクターの脱落やゆるみ)
- 機体(ローター・プロペラ、フレーム、機体識別票など)の外観に損傷・ゆがみがないか
- 各機器に異常な発熱はないか
- 機体にゴミなどが付着していないか
飛行後点検の結果は、日常点検記録の特記事項に「飛行後点検:異常なし」のように記入し、不具合があれば箇所や事象も書きます。続けて、飛行記録(様式1)に実施した飛行を記録します。記録の詳しい書き方は、コラム「ドローン飛行日誌の書き方」で記入例つきで解説しています。
6. 実地試験での制限時間と減点基準
国家資格の実地試験(登録講習機関の修了審査も、同じ基準に準じて行われます)では、日常点検は「口述試験」として採点されます。マルチローターの細則による制限時間は次のとおりです。
| 科目 | 制限時間 |
|---|---|
| 飛行空域及びその他の確認 | 3分 |
| 作動前点検+作動点検 | 合わせて12分 |
| 飛行後点検+飛行後の記録 | 合わせて5分 |
制限時間内に終わらなかった点検・記録は、点検漏れ・記録漏れとして扱われます。主な減点は次のとおりです(100点の持ち点から引かれ、二等は70点以上、一等は80点以上で合格)。
| 場面 | 内容 | 減点 |
|---|---|---|
| 飛行前 | 飛行に必要な点検を1つでも行わなかった | 10点 |
| 飛行前・飛行後 | 日常点検記録の記載漏れ・誤り | 5点 |
| 飛行前・飛行後 | 日常点検記録の軽微な誤り(点検日時や場所の書き誤りなど) | 1点 |
| 飛行後 | 飛行後の状態確認に必要な点検を1つでも行わなかった | 5点 |
| 飛行後 | 飛行記録の記載漏れ、飛行時間の計算誤り | 10点 |
| 飛行前 | 周囲の安全を確保せずに推進系統などを作動させた | 不合格 |
点検の減点は、同じ場面で複数の減点に当たっても、最も高いもの1つだけが適用されます。とはいえ、飛行前10点と飛行後の記録10点を落とすだけで20点を失い、二等なら残りは実技で10点しか余裕がありません。点検と記録は、確実に満点を取りにいくべき科目です。
7. よくある質問
Q. 日常点検は毎回必要ですか?
A. 特定飛行を行う場合、国土交通省の取扱要領により、飛行させる都度、日常点検を行って日常点検記録に結果を記載する必要があります。特定飛行以外でも、同じように点検・記録することが推奨されています。
Q. 作動前点検と作動点検の違いは何ですか?
A. 作動前点検は、電源を入れる前に、機器の取付け状態や機体・操縦装置の外観を確認する点検です。作動点検は、電源を入れて機体と操縦装置を作動させ、電源・通信・バッテリー残量・リモートID・推進系統・自動制御系統と操縦系統が正常に動くかを確認する点検です。
Q. 実地試験で日常点検にかけられる時間はどのくらいですか?
A. 国土交通省の実地試験実施細則(マルチローター)では、作動前点検と作動点検を合わせて12分、飛行後点検と飛行後の記録を合わせて5分です。時間内に終わらなかった点検や記録は、点検漏れ・記録漏れとして扱われます。
Q. メーカーの取扱説明書と国の点検項目、どちらに従えばよいですか?
A. 機体の設計製造者が日常点検の項目を指定している場合は、それに従います。メーカー指定の点検様式があれば、国の様式2の代わりに使うこともできます。
監修者コメント(関口拓矢・講師責任者)
「点検は、項目を『知っている』ことと、緊張した本番で時間内に『やり切れる』ことが別物です。講習では、点検の順番を体で覚えるまで繰り返し練習していただいています。」
参考にした情報源
- 国土交通省「無人航空機の飛行日誌の取扱要領」
- 国土交通省「二等無人航空機操縦士実地試験実施細則 回転翼航空機(マルチローター)」
- 国土交通省「一等無人航空機操縦士実地試験実施細則 回転翼航空機(マルチローター)」
- 国土交通省「無人航空機操縦士実地試験実施基準」
※制度・基準は改正される場合があります。必ず国土交通省の最新情報をご確認ください。
まとめ:「確認 → 作動前 → 作動 → 飛行後」の順で、毎回・漏れなく
日常点検は、飛行空域などの確認、電源を入れる前の作動前点検、電源を入れての作動点検、飛行後点検の4段階で進め、そのたびに日常点検記録へ書き込みます。実地試験では点検漏れや記録漏れが大きな減点になり、安全確認なしの作動は即不合格です。手順を体で覚えるまで、繰り返し練習しておきましょう。
日常点検は、国家資格の講習で実機を使って指導しています