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「NDAA準拠」とは何か|官公庁・公共案件を受けたい事業者が知っておきたい機体調達のセキュリティ動向

「ドローンの規制」というと飛行禁止区域や許可申請の話を思い浮かべがちですが、2026年はもう一つ、見落とせない波が来ています。「どんな機体・部品なら調達できるのか」という、安全保障がらみの話です。

執筆:吉田靖彦(代表取締役/一等・二等無人航空機修了審査員) |監修:関口拓矢(講師責任者) |公開日:2026-09-27/更新日:2026-09-27
フライトコントローラー基板のイメージ写真

※画像はイメージです

現場で機体を飛ばしている方から「ドローンの規制」と聞くと、飛行禁止区域や許可・承認申請といった、「どこで飛ばせるか」の話を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。私自身、最初はそうでした。しかし2026年の今、事業者としてもう1つ見落とせない波が来ています。それが「どんな機体・部品なら調達できるのか」という、安全保障がらみの話です。この記事では、①「どこで飛ばせるか」の法規制の動き、②あまり知られていない「NDAA」というアメリカ発のルール、③それが実は日本国内の案件にも関係してくる理由、④案件を受けたい事業者が今できる実務対応、の順にお伝えします。官公庁・インフラ点検・防災など公共性の高い案件を視野に入れている方ほど、押さえておく価値のある内容です。

1. おさらい:「どこで飛ばせるか」の法規制も年々厳しくなっている

まず基本を簡単におさらいします。2022年12月の航空法改正で、目視外・第三者上空を飛ばせる「レベル4飛行」が解禁されました。これには一等無人航空機操縦士のライセンス、機体側の第一種機体認証、そして国土交通大臣の許可・承認が必要で、物流やインフラ点検の現場での商業利用が少しずつ本格化しています。さらに2026年7月には、重要施設周辺の飛行禁止区域が拡大される法改正も施行されました(詳細は国土交通省・警察庁の公式発表をご確認ください)。要するに、「どこで飛ばせるか」のルールは年々細かく、そして厳しくなっているというのが今の流れです。ここまでは、ドローンに関わる方なら比較的なじみのある話だと思います。

ここで押さえておきたいのは、こうした「どこで飛ばせるか」に関するルールは、ドローンに関わる方の多くがすでに何らかの形で意識している領域だということです。講習の座学でも、レベル4飛行の要件や飛行禁止区域の考え方は毎回お伝えしている内容であり、業界内での情報共有も比較的進んでいます。一方で、これからお話しする「何を飛ばせるか」の話は、まだ業界内でも十分に共有されていない、新しい論点だと感じています。

2. 「何を飛ばせるか」の話:NDAAと部品調達の変化

ここからが、意外と知られていない話です。アメリカには「NDAA(国防権限法)」という法律があり、その中に「政府機関は特定の国に関係するドローンや部品を調達・運用してはいけない」というルール(American Security Drone Act)が含まれています。2023年12月に成立したFY2024年度のNDAAにこの規制が盛り込まれ、連邦機関が「対象外国事業体(Covered Foreign Entity)」製のUAS(無人航空機システム)を調達することが禁止されました。この規制はその後さらに広がっており、報道および米連邦の公表情報によれば、成立から2年後にあたる2025年12月22日以降は、機関がFASC(対象外国事業体に関する連邦調達セキュリティ委員会)指定の禁止対象UASの運用サービスを調達すること、また連邦の委託契約を受ける事業者が連邦資金をそうしたUASに使うことが、それぞれ禁止の対象になったとされています。適用範囲の詳細は米連邦官報・NDAA条文が一次情報となりますので、実務で正確な線引きが必要な場合は必ずそちらをご確認ください。

「NDAA準拠(NDAA compliant)」という言葉もよく出てきますが、これは公式な認証マークではなく、「対象国製ではない・重要な部品に対象国製を含まない」ということを表す説明のための言葉だと理解しておくとよさそうです。NDAA準拠を名乗ること自体にメーカーによる自己申告の性格が強く、統一的な認証機関があるわけではありません。似た言葉に「Blue UAS」がありますが、こちらは米国防総省(国防イノベーションユニット)が調達時に使う、サプライチェーンまで含めた検証を経たリストです。Blue UASに載っている機体はNDAA準拠と言えますが、NDAA準拠を謳う機体すべてがBlue UASというわけではない、という関係性を押さえておくと理解しやすいと思います。

3. 「アメリカの話でしょ?」と思う前に:日本国内でも進む同じ方向の動き

「アメリカの政府調達の話でしょ?自分には関係ない」と思われるかもしれません。ここが今回、一番お伝えしたいポイントです。実は日本国内でも、似たような動きがすでに進んでいます。関係省庁の申し合わせにより、2020年9月14日付で「政府機関等における無人航空機の調達等に関する方針」が示され、政府機関・独立行政法人等が重要インフラの点検や詳細な測量など重要な業務で無人航空機を使う際には、アクセス制御や暗号化などのリスク対応を調達段階から確認する枠組みが作られました。この方針を土台に、政府機関・一部の独立行政法人では中国製ドローンの新規調達を事実上避け、導入前のセキュリティ審査を厳しくする運用が続いていると報じられています。さらに2022年5月に成立した「経済安全保障推進法」が、サプライチェーン(部品の調達網)に関するルール全般の法的な土台になっています。

この流れは、機体の導入にも具体的に表れ始めています。防衛装備庁は2026年、国内のドローン企業(テラドローン株式会社)と製造委託契約を結び、国産の「モジュール型UAV(汎用型)」教育用機体300機(契約額約1億1,543万円)を導入すると発表しました。納入は2026年9月末までを予定しているとのことです。同社はその後、国産の迎撃用ドローン「Terra B1」についても防衛装備庁との量産契約を締結したと発表しています。契約の規模や機数は今後も変わっていく可能性があるため、正確な数値は各社・防衛装備庁の公式発表をご確認いただきたいのですが、「純国産の機体を、防衛関連の現場に導入する」という流れが、報道ベースではなく実際の契約として具体化してきていることは押さえておいてよいと思います。

つまり「アメリカのNDAA」と「日本の経済安全保障の流れ」は、別々の国の話でありながら、方向性としては地続きです。官公庁やインフラ関連など公共性の高い案件を受けたい事業者にとっては、「どんな機体・部品を使っているか」自体が、案件を受注できるかどうかに関わってくる時代に入りつつある、ということです。

国内サプライチェーンの現実:「すぐに全部国産化」は簡単ではない

「それなら国産部品だけを使えばいいのでは」と思われるかもしれませんが、話はそう単純ではありません。バッテリー、通信モジュール、フライトコントローラといった主要部品は、これまで海外(特に中国)のサプライチェーンに大きく依存してきた経緯があり、国内メーカーが同等の性能・価格帯の部品を量産できる体制を整えるには、一定の時間がかかるとされています。実際、防衛装備庁が国産ドローンの導入契約を進めている一方で、これは主に教育用・防衛関連という特定用途からの取り組みであり、民間の商用ドローン市場全体が一気に国産部品へ切り替わっているわけではありません。コストや在庫の制約が当面続く可能性がある、という前提で計画を立てておくのが現実的です。具体的な移行スケジュールや価格差については、業界団体やメーカーの発表など、その時点の一次情報でご確認いただくことをおすすめします。

4. この2つが交わるところ:官公庁・公共案件を受けたい事業者が今できること

「じゃあ具体的に何をすればいいの?」という話をします。結論から言うと、今すぐ機体を全部買い替える必要はありません。まずは「自分の状況を把握すること」と「聞かれたときに答えられる状態にしておくこと」から始めれば十分です。

ステップ1:自分の機体の「素性」を把握しておく

普段使っている機体について、次を一度整理しておきましょう。

これは「今すぐ買い替えろ」という話ではなく、発注元から聞かれたときにすぐ答えられるようにしておくための整理です。答えられないこと自体が、案件によってはマイナス評価になり得ます。

現場のリアル(筆者の経験から)

私自身、農林水産省が関わるスマート農業技術の実証プロジェクトで、機体の製作・運用・開発を担当したことがあります。そこで求められた条件は「国産(日本国内製造)であること」でした。ただ、実際に組み上げた機体の中身はというと——フライトコントローラー(FC)はNDAA準拠品を選定した一方で、フレームは海外メーカーからの輸入品、その他の部品も海外製のものが多く、それらを日本国内で組み立てて仕上げる、という構成でした。つまり「国産」という言葉は、必ずしも「全部品が純粋に日本製」という意味ではなく、「重要な部品(この場合はFC)だけは出自をきちんと選び、国内で組み立てて仕上げる」という運用で成立していることがある、というのが実感です。「国産だから安心」「海外製だから即NG」と単純に割り切れるものではなく、どの部品を、どんな基準で選ぶかという設計判断の積み重ねなのだと感じました。なお、このプロジェクトは研究開発・実証の枠組みであり、官公庁が実運用する機体を選ぶ「調達審査」そのものとは制度上別物です。とはいえ、実証段階からすでに「国産」「NDAA準拠」といった言葉が現場に降りてきている、というのは実感として持っておいてよい変化だと思います。

中央省庁・防衛関連だけの話ではない:自治体案件でも広がる同じ傾向

ここまで防衛装備庁や中央省庁の話を中心にお伝えしてきましたが、この流れは自治体レベルのインフラ点検・防災関連の案件にも徐々に広がりつつあるようです。橋梁・河川・送電設備といった公共インフラの点検業務や、災害時の情報収集業務を自治体から受注する際にも、撮影データの保管場所や機体のセキュリティに関する項目が仕様書に含まれるケースが増えてきていると、業界内では指摘されています。中央省庁向けの大規模案件だけでなく、地域のインフラ点検・防災協定といった、より身近な案件でも同様の視点が求められ始めているという点は、地方で事業を営む方にとっても押さえておく価値があると思います。ただし、自治体ごとに仕様のばらつきが大きい分野でもあるため、この記事の内容を一般論として受け取りつつ、実際の案件では必ず発注元の仕様書を個別に確認するようにしてください。

ステップ2:「一律排除」ではなく「個別評価」だと理解しておく

官公庁向けの調達は、製造国を一律の除外条件にしていない案件も多く、機体や運用環境のセキュリティ機能を個別に評価するケースがあるようです。たとえば、外部ネットワークに接続せずに運用できるか、撮影データや飛行ログを組織内でどう管理しているか、といった点が見られることがあります。つまり「海外製だから即アウト」「国産だから即OK」という単純な話ではなく、案件ごとの仕様書をちゃんと読むことが実務上いちばん確実です。「官公庁対応」を謳う製品でも、それが全ての官公庁・自治体の仕様に自動的に適合するわけではない、という点も覚えておいて損はありません。

ステップ3:聞かれやすいポイントを先回りして準備しておく

案件の提案時によく聞かれそうな項目を、あらかじめ資料化しておくと動きが早くなります。

ステップ4:情報を「定点観測」する習慣をつける

制度も調達環境も、今後さらに変わっていきます。すべてを毎日追う必要はありませんが、月1回程度、次のような情報源をチェックしておくと安心です。

一次情報を直接見るのが大変な場合は、入札情報をまとめている民間サービスなどを併用するのも一つの方法です。

今日からできる、いちばん現実的な一歩

すべてを完璧に揃えるのは、正直かなり大変です。まずは「ステップ1(自分の機体の素性を把握する)」だけでもやっておくと、案件が来たときの初動がまったく変わってきます。完璧な対応より、聞かれたときに慌てないことを目標にするのが現実的です。

確認忘れを防ぐためのチェックリスト

よくある質問

Q. 「NDAA準拠」は、日本の官公庁案件でも必須の条件ですか?
A. 案件によります。NDAA自体はアメリカの法律であり、日本の官公庁調達に直接適用されるものではありません。ただし、公共性の高い案件では、機体・部品の出所やセキュリティ機能を個別に確認する仕様が増えており、結果的に「NDAA準拠」に近い基準が参考にされるケースがあります。必ず個別の案件の仕様書をご確認ください。

Q. 「NDAA準拠」と表示されていれば、公的な認証を受けているということですか?
A. いいえ。NDAA準拠(NDAA compliant)は公式な認証マークではなく、メーカーが「対象国製ではない」「重要部品に対象国製を含まない」ことを説明するために使う言葉です。公式な認証に近いものとしては、米国防総省が関わるBlue UASのリストがあります。

Q. Blue UASとNDAA準拠は同じ意味ですか?
A. 異なります。Blue UASに載っている機体はNDAA準拠と言えますが、NDAA準拠を謳う機体すべてがBlue UASに載っているわけではありません。NDAA準拠は自己申告的な性格が強いのに対し、Blue UASはサプライチェーンまで含めた検証を経たリストです。

Q. 中国製の機体・部品を使っていたら、官公庁案件は受けられませんか?
A. 案件によって扱いが異なります。製造国を一律の除外条件にしていない案件もあり、外部ネットワークへの接続の有無やデータ管理方法など、セキュリティ機能を個別に評価するケースがあるようです。「中国製だから即アウト」と単純に判断せず、案件ごとの仕様書を確認することが実務上もっとも確実です。

Q. 個人事業主でも、この話は関係ありますか?
A. 官公庁・自治体・インフラ関連など公共性の高い案件を受注したい方には関係してきます。民間の一般的な撮影・点検業務が中心であれば、現時点では優先度は高くありませんが、公共案件への参入を将来的に考えている場合は、早めに自分の機体の素性を整理しておくと安心です。

Q. 今使っている機体を、今すぐ買い替える必要がありますか?
A. 今すぐの買い替えが必須というわけではありません。まずは自分の機体のメーカー・主要部品の出所を把握し、発注元から聞かれたときに答えられる状態にしておくことが現実的な第一歩です。案件の仕様によって必要な対応は変わるため、個別に確認しながら判断することをおすすめします。

Q. 国産部品だけを使った機体に、今すぐ切り替えるべきですか?
A. 必須ではありません。主要部品の国内サプライチェーンはまだ発展途上で、コストや在庫の制約が当面続く可能性があります。案件の要件次第では国産へのこだわりが必要な場面もありますが、多くの案件ではまず「部品の出所を把握し、説明できる状態にしておくこと」の方が優先度は高いといえます。

Q. 当校の講習では、この話題をどのように扱っていますか?
A. 座学講習の中で、法規制の最新動向とあわせて、機体・部品調達を取り巻くセキュリティの考え方についても触れています。制度の名前を覚えるだけでなく、案件を受ける前に何を確認すればよいかという実務レベルでお伝えするようにしています。

監修者コメント(関口拓矢・講師責任者)

「NDAAやBlue UASという言葉だけを聞くと、自分には関係のない遠い話に感じるかもしれません。ですが、日本国内でも同じ方向の動きが実際の契約として進み始めています。まずは自分の機体の素性を一度整理しておく——これだけでも、案件が来たときの安心感が大きく変わります。当校の講習でも、こうした最新の動向を踏まえた実務の考え方をお伝えしています。」

参考にした情報源

※制度・契約内容・対象リストは今後変更される場合があります。個別の案件判断には、必ず国土交通省・防衛装備庁・内閣府、および米連邦官報等の最新の一次情報をご確認ください。本記事は制度の全体像をお伝えするものであり、対象事業体の一覧や個別案件の可否判断まで網羅するものではありません。

まとめ

法規制は「どこで飛ばせるか」を、経済安全保障・NDAAの流れは「何を飛ばせるか」を、それぞれ左右します。今はまだ、この2つをセットで意識している事業者は多くありません。だからこそ、早めに一次情報を追う習慣をつけ、自分の機体の素性を整理しておくことが、これからの案件のチャンスにつながっていくはずです。

繰り返しになりますが、今日からできることは難しいことではありません。今使っている機体のメーカー・製造国・主要部品の出所を、まず自分自身が把握しておくこと。それだけで、案件の提案時に聞かれたときの初動が大きく変わります。完璧な体制を最初から整えようとすると、かえって手が止まってしまいがちです。「聞かれたときに慌てない」という現実的なラインを目標に、できるところから一歩ずつ進めていただければと思います。当校では、こうした最新動向も踏まえながら、実務に直結する形での学びを講習内容に反映しています。制度・契約状況は今後も変化していく分野ですので、この記事をきっかけに、ご自身でも一次情報を定期的にチェックする習慣をつけていただければ幸いです。

最新の法規制・業界動向を踏まえた実務知識も、当校の講習でお伝えしています

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