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「Blue UAS」とは何か|国産ドローンメーカーが米国政府調達市場に挑むための認証制度と、日本国内の支援拠点

以前の記事「NDAA準拠とは何か」では、官公庁・公共案件を受けたい「使う側」の事業者向けに、機体・部品調達のセキュリティ動向を解説しました。今回はもう一歩進んで、「作る側」である機体・部品メーカーに向けて、米国政府が管理する「Blue UAS」という認証済みリストの仕組みと、日本企業がそこに挑戦するための支援体制を掘り下げます。

執筆:吉田靖彦(代表取締役/一等・二等無人航空機修了審査員) |監修:関口拓矢(講師責任者) |公開日:2026-10-03/更新日:2026-10-03
NDAA準拠を意識した機体アセンブリのイメージ

※画像はイメージです

前回の記事では、「NDAA準拠」という言葉が、官公庁・公共案件を受けたい事業者にとってなぜ無視できないテーマになっているかをお伝えしました。その中で少し触れた「Blue UAS」という仕組みについて、今回はもう少し踏み込んでお伝えします。視点も少し変えて、「案件を受ける側」ではなく「機体・部品を作って売る側」、つまり国産メーカー・部品メーカーにとってBlue UASがどういう意味を持つのか、という話が中心です。Task drone Labのように自社で機体やモジュールを開発している方、将来的に海外展開や防衛・公共調達案件への参入を視野に入れている方には、特に関係してくる内容だと思います。

1. おさらい:Blue UASは「NDAA準拠」の、一歩進んだ版

前回お伝えした通り、「NDAA準拠(NDAA compliant)」は公式な認証マークではなく、メーカーが「対象国製の重要部品を使っていない」ことを説明するための、自己申告的な言葉です。これに対して「Blue UAS」は、米国防総省の国防イノベーションユニット(DIU)が主導して作った、もう一段階厳格な仕組みです。NDAA(国防権限法)2020年度版の第848条を背景に、2020年に「Blue UAS Framework」として立ち上げられました。この第848条は、米国防総省が特定の国(中華人民共和国)に関係する無人航空機システムや、その重要部品(フライトコントローラー、無線・データ伝送機器、カメラ・ジンバル、地上管制システムやその運用ソフトウェア、ネットワーク接続機能、データ保存機能など)を調達・運用することを制限する内容です。Blue UASは、この要件をクリアした商用由来の機体・部品を国防総省が安心して採用できるよう、民間企業と連携して認証・整備していく取り組みとして始まりました。

2. 「Blue UAS Framework」と「Blue UAS Cleared List」、実は2つの仕組みがある

ここが、意外と誤解されやすいポイントです。「Blue UAS」という名前の仕組みは、実は2つに分かれています。

つまり、Frameworkは「審査のプロセス」、Cleared Listは「審査を通った製品の名簿」と理解すると分かりやすいと思います。2025年2月の拡張では、23のプラットフォームと14のユニークな部品・機能がNDAA検証とサイバーセキュリティレビューの対象に新たに選ばれたと報じられており、FPV機・テザー式プラットフォームなど対象範囲も広がりを見せています。2026年7月の更新では、Skydio社のX10・R10・X10用ドックがCleared Listに追加されるなど、動きは現在も継続しています。

Cleared Listに掲載されている具体的な企業・機体名を見ると、イメージがつかみやすくなると思います。報道によれば、2026年時点でCleared Listには50を超えるプラットフォームが名を連ねており、Skydio(X10D、X2D)、フランスのParrot(ANAFI USAシリーズ)、Shield AI(V-BAT)、AeroVironment(Red Dragon)、Teal Drones(Teal 2)、Teledyne FLIR(Black Hornet 4)、Freefly Systems(Astro、AltaX)、Inspired Flight Technologies(IF800、IF1200A)といった、米国および同盟国のメーカーが含まれています。日本メーカーの名前は、少なくとも現時点の一般的な報道では見当たりませんでした。だからこそ、この市場はまだ「空白地帯」が大きく、先行して参入する価値がある分野だと捉えることもできると思います。

3. 運営機関がDIUからDCMAへ:2025年末の大きな体制変更

Blue UAS Cleared Listの運営という面では、2025年末に大きな変化がありました。これまでこのリストを管理してきたDIU(国防イノベーションユニット)から、国防契約管理局(DCMA)へ、管理が正式に移管されたのです。報道によれば、当初は2026年1月1日が移管期限とされていましたが、実際には前倒しで2025年12月3日に移管が完了したとされています。DCMA側では、この業務を担う新しいチーム「Unmanned Systems-Experimental Command(US-X)」が設立され、カリフォルニア州パームデールを拠点に運営されているとのことです。

この変更が意味することとして報じられているのは、Blue UASという取り組みが「研究開発的・実験的な位置づけ」から、「調達実務を継続的に担う、より恒久的な体制」へと移行したという点です。国防総省は2027年までに小型無人機システムの分野で優位性を確立する目標を掲げているとされ、信頼できるドローンの調達を今後さらに拡大していく狙いがあるとみられます。メーカー側にとっては、申請窓口や手続きの詳細が今後変わっていく可能性があるため、都度、公式情報を確認する姿勢が欠かせません。

4. 「Green UAS」という、もう一つの道

Blue UASと並んでよく出てくるのが「Green UAS」という言葉です。これは、電力会社・建設会社・自治体といった、防衛分野ではない民間・公共インフラ向けの市場を対象にした、信頼性基準の仕組みです。「Blue UASの簡易版」と誤解されることもあるようですが、業界の解説記事によれば、要求される信頼性のレベルはBlue UASと同等とされており、対象とする市場(防衛か、民間・公共インフラか)が違う、という理解が実情に近いようです。2025年7月には、Green UAS認証がBlue UAS Clearedステータスへの正式な認証ルートの一つとして認められるようになったとも報じられており、「まずGreen UASの基準を満たし、民生市場で実績を積みながら、将来的にBlue UASを目指す」という段階的なアプローチも選択肢になり得ます。ドローン業界の有識者による解説では、こうした流れを「性能競争から信頼性競争への転換」と表現するものもあり、飛行時間やカメラ性能だけでなく、部品の出自やソフトウェアの透明性そのものが競争力になってきているという指摘は、国内メーカーにとっても参考になる視点だと思います。

5. 「海外の基準」ではなく「売り込むチャンス」という視点の転換

ここまでの話を、「アメリカの調達基準が厳しくなっている」という受け身の話として読むこともできます。しかし、国産メーカー・部品メーカーの立場からは、もう一つの見方ができます。中国製部品への依存を減らそうとする米国の動きは、裏を返せば「中国製以外の、信頼できる部品・機体の供給元」を探しているということでもあります。日本のメーカーが自社の技術力・サプライチェーンの透明性を武器に、この枠組みに参入できれば、米国政府調達という大きな市場への入り口になり得ます。これは、前回の記事でお伝えした「日本国内の官公庁案件を守るための経済安全保障」とは逆方向の、「日本から海外市場へ攻めていく」という視点です。Task drone Labのように自社で機体・モジュールの設計から手がけている事業者にとっては、むしろチャンスとして捉えられる動きだと考えています。

もちろん、米国政府調達市場への参入は簡単な道ではありません。言語の壁、現地の商習慣、認証プロセスそのものの専門性など、乗り越えるべき課題は少なくありません。それでも、次の章で紹介する国内支援拠点の存在は、こうした課題のいくつかを国内にいながら解決できる可能性を示しています。「海外市場への参入はハードルが高すぎる」と最初から諦めてしまうのではなく、まずは自社の技術がこの枠組みのどこに当てはまりそうか、情報収集から始めてみる価値はあると思います。

6. 日本国内に支援拠点が誕生:Blue UAS Laboratory Kawachi(BULK)

とはいえ、「じゃあ自社で申請してみよう」と思っても、NDAA要件の読み込み、サイバーセキュリティ評価、部品表(サプライチェーン)の整理など、実務的な準備には高い専門性が求められ、単独での対応は決して簡単ではありません。この壁を下げる動きとして、2026年7月31日、株式会社アイ・ロボティクスと株式会社ドローン・ジャパンが、茨城県河内町の「ドローンフィールドKAWACHI」内に支援拠点「Blue UAS Laboratory Kawachi(BULK)」を設立したと発表しました。

BULKは、米国政府調達・防衛・公共用途市場への参入を目指す日本のドローンメーカー・パーツメーカー・アプリケーションメーカーを支援する拠点として位置づけられています。飛行場や研究開発施設、屋内外の検証環境を活用しながら、技術支援、要件整理、設計レビュー、試験計画、ドキュメント整備、海外連携支援といった実務を提供するとのことです。対象となる製品も、完成機だけでなくフライトコントローラー・通信モジュール・センサー・カメラといった個別の部品まで幅広く想定されているようです。米国の調達制度が求める複雑な準備を、国内にいながら進められる環境が整い始めているという点は、国産メーカーにとって追い風になる動きだと感じています。

現場の視点から

前回の記事で、国の実証プロジェクトに機体製作で参画した際、フライトコントローラーだけはNDAA準拠品を選定したというお話をしました。あの時点では「NDAA準拠」という自己申告的な基準を手がかりにするしかありませんでしたが、BULKのような支援拠点が国内に整ってきたことで、今後は部品選定の初期段階から、より体系的な基準(Blue UAS・Green UAS)を参照しながら設計できる環境に近づいていくのではないかと感じています。自社で機体を作る立場として、こうした動きは注視しておきたいところです。

7. 自社に関係があるかどうかの判断ポイント

すべてのメーカーが今すぐBlue UASを目指す必要はありません。次のような方にとって、特に関係してくる話だと考えています。

逆に、国内の民間向け撮影・点検業務が中心で、海外展開も当面予定していない場合は、現時点で優先度を上げる必要はないと思います。まずは「こういう仕組みがある」ということを知っておくだけでも、将来の選択肢を狭めないための備えになります。

8. 今、現実的にできる一歩

興味を持った場合の、現実的な最初の一歩を整理しておきます。

認証にかかる費用や期間は、対象となる製品やサプライチェーンの複雑さによって大きく変わるとみられ、現時点で一律の数字は公表されていません。正確な見積りが必要な場合は、BULKのような支援拠点や専門家への個別相談をおすすめします。

よくある質問

Q. 「Blue UAS Framework」と「Blue UAS Cleared List」は同じものですか?
A. 厳密には別の仕組みです。Frameworkは部品単位の検証プロセス、Cleared Listはその検証を経た完成機・部品の一覧です。前者が「審査」、後者が「審査済みの名簿」という関係にあると理解しておくと、ニュースを読むときの混乱が減ると思います。

Q. Green UASとBlue UASは、どちらを先に目指すべきですか?
A. 想定する販売先によります。民間・公共インフラ向けが中心ならGreen UASが現実的な第一歩です。Green UASはBlue UASへの正式な認証ルートの一つにもなっているため、将来的に防衛分野も視野に入れている場合でも、まずはGreen UASから実績を積むという進め方が選択肢になります。

Q. 日本の部品メーカーが、単独でBlue UAS認証に挑戦することはできますか?
A. 申請自体は各企業が行いますが、NDAA要件の読み込みやサイバーセキュリティ評価、部品表の整理など実務的な準備は専門性が高く、単独対応は負担が大きいとされています。BULKのような国内の支援拠点を活用し、技術支援や設計レビューを受けながら進める選択肢があります。

Q. Blue UAS認証には、どのくらいの費用・期間がかかりますか?
A. 一律の公表数値はなく、対象や複雑さによって変わるとみられます。個別に支援拠点や専門家へ確認することをおすすめします。

Q. Blue UASの管理がDIUからDCMAに変わったことで、何が変わりますか?
A. 2025年12月、運営がDCMA傘下の新チーム(US-X)へ移管されました。より恒久的な調達実務の体制への移行と報じられています。

Q. この話は、国内の操縦士講習とどう関係しますか?
A. 直接の資格要件ではありませんが、当校の講習では機体・部品調達を取り巻く国内外のセキュリティ動向にも座学で触れています。

監修者コメント(関口拓矢・講師責任者)

「Blue UAS」と聞くと、国内の講習とは縁遠い話に感じるかもしれません。ですが、国産メーカーが海外市場に挑戦するための土台が、BULKのような国内拠点の誕生によって少しずつ整ってきているのは、業界全体にとって明るい動きだと感じます。当校でも、こうした機体開発・調達を取り巻く最新動向を、座学の中で折に触れてお伝えしています。

参考にした情報源

※制度・対象リスト・運営体制は今後変更される可能性があります。個別の申請・認証の判断には、必ずDIU・DCMAおよび各支援拠点が公表する最新の一次情報をご確認ください。本記事は制度の全体像をお伝えするものであり、個別の認証可否や費用の判断材料を網羅するものではありません。

まとめ

Blue UASは、NDAA準拠という自己申告的な基準の一歩先にある、サプライチェーンまで含めた検証済みリストです。2025年末の運営移管(DIU→DCMA)によって、研究的な取り組みから、より恒久的な調達実務の仕組みへと変わりつつあります。これを「海外の厳しいルール」としてだけ捉えるのではなく、「信頼できる供給元を探している大きな市場への入り口」として捉え直すと、国産メーカーにとっての見え方も変わってくるのではないでしょうか。BULKのような国内支援拠点の誕生は、その入り口への距離を少し近づける動きです。今すぐ全社で取り組む必要はありませんが、自社の製品・サプライチェーンがこの枠組みに関係し得るかどうかを一度確認しておくことは、将来の選択肢を広げる一歩になるはずです。

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